2011年05月05日

スローカフェ物語 第三話 「コーヒー刑事登場」

いつもの様に暇なカフェ。店員のギャレット君が新聞を読んでいると、
「オーナー、今日駅弁刑事がありますよ」
と、声を掛けてきた。どうやらテレビ欄を見ていたらしい。
「そうか、もう五作目だなあ」
二時間サスペンスのシリーズである。五作もやるとは、好評なのだろう。
「しかし、何で駅弁刑事なんですか?」
「駅弁が好きだからだよ」
「なんて安直な・・・なんでもありですね」
「ラーメン刑事なんてのもあったな」
「なるほど。オーナーなら、コーヒー刑事ですかね」
「そうだねえ、コーヒー刑事になるかね。なら、君は部下のシュガー刑事。」
「シュガー・・・」
「君は色が白いし、コーヒーに関係があるし」
「なるほど」
「角砂糖刑事でも良いが・・・」
「シュガーでいいっす!」
「では、シュガー刑事、捜査をお願いしたい」
「な、なんすか?」
「店から砂糖が行方不明になった。至急砂糖を確保するように」
「平たく言えば、砂糖を買いに行けと。。」
「さあ、行くんだ!」
「へい・・・」
しぶしぶギャレット君は買出しに出掛けた。さっき確認したら、ストックがなくなってたんだよねえ。ごめんね、ギャレット君。

スローカフェ物語 第三話 「コーヒー刑事登場」


しばらくして、ギャレット君は戻ってきた。女の子を連れて・・・。
「オーナー、何か店の前でうろうろしてる子が居て、聞いてみるとなにやら困ったことがあるらしいっす」
「ふむ」
「ええと、こちらこのカフェのオーナー。困ったことは解決してくれるっす。通称コーヒー刑事と呼ばれていて、鋭い推理が持ち味っす」
「えっ」
「あの、刑事さんなんですか?」
おとなしそうな女の子は、おずおずと声を出した。
「違います。しがないカフェのオーナーです。」
「そう、コーヒー刑事は、唯のあだ名っす」
さっき付けたばかりだけどね・・・
「俺はギャレット、通称シュガー刑事っす」
「はあ・・・」
女の子は、ぽかんとしたまま立ち尽くした。変な所に連れてこられたな、という感じだ。
「店の中に入ってコーヒーでも飲みながら話を聞くっすよ。こちらにどうぞ」
ギャレット君は、女の子をカウンター席までエスコートした。

スローカフェ物語 第三話 「コーヒー刑事登場」

コーヒーをお出しし、女の子は、一口飲んでほっとした様子になると、再び口を開いた。
「困った事と言うのは、探し物が見つからないんです」
「なるほど」
「かばんの中も、机の中も、探したけれど見つからないのです」
どこかで聞いたことのあるような話だな。
「まだまだ探す気っすか?それより俺と踊らない?」
これまた、どこかで・・・
「ギャレット君、わかる人にしかわからないネタは如何なものか」
「スミマセ」
「それで、もしかしたら落としたのかとうろうろしてたのです」
「なるほど」
「それで、何が見つからないのですか?」
「眼鏡です。いつもかけてたのに、見つからなくて。あれがないと私・・・」
「・・・」
「・・・」
私とギャレット君は絶句した。
「コ、コーヒー刑事がすぐに見つけてくれるっすよ」
「お願いします」
「うむ。では、ギャレット…もとい、シュガー刑事、鏡は持っているかい?」
「もちろん、身なりには気を使いますからね」
「では、彼女に渡してあげなさい」
「了解っす」
ギャレット君は、ポケットから携帯用鏡を取り出し、彼女に渡した。
「その鏡の中に、探し物があるはずですよ」
「え、鏡の中に?」
彼女は鏡を手に取り、しげしげと見つめた。
「あ・・・ありました。確かに鏡の中に」

スローカフェ物語 第三話 「コーヒー刑事登場」

「これにて一件落着っすね」
「どうもありがとうございます。コーヒー刑事さん、シュガー刑事さん」
「いえいえ」

こうして、見知らぬ女の子の依頼を無事解決できたのであった。めでたしめでたし。



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Posted by cafeowner at 08:56│Comments(0)スローカフェ物語
 
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